第4章
朝倉奏子視点
私は井生先生の巨大なマホガニーのデスクの向かいに座り、持参した書類の束に彼が目を通すのを眺めていた。彼は三十年にわたって朝倉家の仕事を請け負ってきた一族の弁護士だ。
杉田陸の写真。銀行の取引明細書。信託契約書。白羽伊奈の情報。すべて。
井生先生は、私の弁護士になる前は父の弁護士だった。私の婚前契約書を作成し、会社の再編を手掛け、結婚式では立会人まで務めてくれた。
「奏子さん」
彼は書類を置き、老眼鏡を外した。
「これは……膨大な量ですね」
「ええ、まあ」
先生は椅子の背にもたれかかった。
「いつからお気づきに?」
「一週間。いえ、もっと短いかもし...
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