第5章

朝倉奏子視点

家に帰ると、書斎で中守幸希が私を待っていた。彼はマホガニーのデスクの向こうに座っていたが、その手は震えていた。緊急の取締役会議が、彼をひどく動揺させたのだろう。

「奏子」

彼の声はこわばっていた。

「話がある」

私はコートをかけると、ゆっくりと歩み寄った。

「何の話かしら?」

「今日のことだ。取締役会議でのことだよ」

彼は立ち上がった。顔色は青白い。

「一体、何を考えていたんだ?」

私は純粋に戸惑った、という表情を崩さなかった。

「会社を守ろうとしただけですわ。飯田隆さんはあの送金を説明できなかったし、取締役会には知る権利がありました」

「あ...

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