第16章

 伊能黎真は反射的に手を伸ばして抱きとめようとした。その瞬間、鈴鹿柚葉が例の男めがけて突っ込んでいく。

「鈴鹿柚葉! 戻れ——」

 追いかけようとした次の刹那。

 鈴鹿柚葉は三歩を二歩で詰め、男の膝裏へ容赦なく蹴りを叩き込んだ。

「ぎゃああああああっ!」

 凄絶な悲鳴。男は前のめりに崩れ、握っていたリモコンが手から滑り落ちる。

 鈴鹿柚葉は間髪入れず、そのリモコンを蹴り飛ばした。さらに男の手首を背後からねじ上げ、地面に押さえつける。膝で背中をがっちり固定。

 パキッ——!

 嫌な音がして、男の手首が折れた。激痛で身体がびくびく痙攣するが、口元を地面に押しつけられていて、呻き声...

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