第17章

「ええ、たまたま通りかかったら、あの人が揉めてるのが見えて……それで……」

「お名前は?」

「夏川音子です」

 警官は手元の書類に書き込み、「少々お待ちください。隊長を呼んできます」と席を立った。

 夏川音子は長椅子に腰を下ろし、目の奥に一瞬、昂ぶりを宿した。

 まさか鈴鹿柚葉が、あんなに動けるとは思わなかった。けれど――今となっては、全部自分の得だ。

 昨日、鈴鹿柚葉がショッピングモールの入口で爆弾犯を制圧した映像は、すでにネット中に拡散していた。大物が二人、SNSで「この子を探している」とまで投稿している。

 音子はその場にいた。友だちと買い物に来ていて、鈴鹿柚葉が飛び出し...

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