第29章

 鈴鹿柚葉は彼に向かって、ふっと眉を跳ね上げた。伊能おじい様が一人で来るものだと思っていたのに、まさか彼まで一緒とは。

 席に着くなり、伊能おじい様は癖のようにポケットを探り、小さな薬瓶を取り出した。中から錠剤を二粒、ころりと手のひらに落とす。

 それを見た柚葉の眉がわずかに動く。

「伊能おじい様、そのお薬……少し見せていただけますか」

 伊能おじい様はきょとんとして、薬瓶を差し出した。

「どうした?」

 柚葉は受け取ると蓋をひねり、匂いを確かめる。さらに一粒だけ取り出して、じっと目を凝らした。

「これ、いつから飲んでいらっしゃいます?」

「一か月ちょっとかな。……何か問題で...

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