第35章

 夏川音子は唇をきゅっと噛み、立ち上がって後を追った。

「……私が行く」

 自分にあれほど優しくしてくれた中村さんが死んだなんて――信じたくなかった。

 それから三十分後。二人は警察署に到着した。

 警察に身元を確認され、案内されたのは遺体安置室。白布がめくられ、鈴鹿柚葉は無表情のまま一瞥する。水に浸かっていたせいか遺体はやや膨れ、顔の判別は難しい。だが体格の輪郭と衣類から、中村さんであることはほぼ分かった。

 夏川音子は一度見ただけで顔を背け、横で吐いた。壁に手をつき、しばらくしてようやく呼吸を整える。声が震えていた。

「中村さんの右腕……三角形に並んだ赤いほくろが、三つ……」...

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