第55章

 伊能黎真はもともと彫りの深い顔立ちで、眉も目つきも鋭い。整った容姿が、やたらと目を引く。ふだんスーツをきっちり着込んで澄ました顔をしていると、近寄るなと言わんばかりの空気を纏う男だ。

 ところが今日はラフな格好で、肩の力が抜けている。眉尻にちょっとだけ挑発的な笑みまで乗って、まるで別人みたいだった。

 鈴鹿柚葉は視線をそらし、気のない調子で言う。

「今日、いつもとちょっと違うね」

 伊能黎真がエンジンをかける。車体の後ろから、低く唸るような咆哮が伝わってきた。

「誰が知るか。あの男が飯に誘って何企んでるかもわかんねぇし、そいつに負けるわけにもいかねぇだろ」

 鈴鹿柚葉は堪えきれ...

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