第8章

ノラ視点

 セロンが歩み寄ってくる。背が高く、端正な顔立ち。深い灰色の瞳には、はっきりとした不安が滲んでいた。

 彼は私の横まで来ると、声を落として訊く。

「厄介ごとか?」

 そう言って、そっと私の手を取った。

「その汚い手をどけろ!」ケィルが吠え、立ち上がって飛びかかろうとする。

 だが護衛たちが即座に押さえつけ、身動きを封じた。

 セロンが眉を上げ、私を見る。

「……こちらの方は?」

「しつこく絡んでくる元契約相手よ」私は淡々と言った。

「放っておいて」

「ノラ!」ケィルの目が血走る。

「どうして——どうして他の男に触らせるんだ!?」

「どうしてって?」私は振り...

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