第165章 嘘

高原文也は手を離すどころか、いっそう強く掴み直した。

「話がある」

「私はない」阿部奈々は顔を背ける。

頭の中を埋め尽くしているのは、医務室でリアに言われた言葉と、昨日テーブルに置かれていた300万の現金だ。

今さら、何の用?

また『ちゃんとした盾になれ』って言い含めに来たのか。

そのとき、休憩センターの大きなガラス扉が押し開けられた。

下山凛が、青いファイルを手に出てくる。

金縁の眼鏡が日差しを反射し、口元の裂けたところには小さな絆創膏。表情は相変わらず冷静そのもの。

「全員、その場で整列」

車を降りたばかりの観測員と患者を一瞥し、下山凛の声が周囲のざわめきを上から押さ...

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