第19章 500号のおもちゃ

「……息、するなら静かにしろ。あいつの前で呼吸がでかいと、それだけで癇に障る。目が合ったら下を向け。見られてないなら、気配ごと消せ」

「それから――あいつが何をしようが、絶対に叫ぶな。音が嫌いだ。前に悲鳴を上げた看護師は、顎を力ずくで外された」

阿部奈々は息を呑んだ。

何なんだ、その忠告は。

忠告というより、この異常者の手でどう潔く死ぬか――その手順書じゃないか。

スキンヘッドの警備員はそれ以上取り合わず、阿部奈々の細い腕を鷲づかみにすると、乱暴に引きずってFエリアの建物へ押し込んだ。

中は外より体感で10度は低い。

長い廊下は、清潔すぎて息が詰まる。窓はない。余計な装飾もない...

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