第21章 お前らこの愚かな豚ども!

密閉されたFエリア-5病室。

死んだような静寂。

――なんだ、あの目は。

漆黒で、底なしに深い。枯れ井戸が二つ並んでいるみたいだ。

そこに「人間らしさ」なんて欠片もない。ただ純度の高い暴力だけが沈んでいる。

阿部奈々は壁に貼りついたまま、息をするのも忘れた。

照明の下で、ようやく「彼」が見えた。

黒い短髪から水が滴っている。肩幅は壁みたいに広い。胸も腹も硬く締まっていて――それ以上に奈々の背筋を凍らせたのは、両腕の刺青だった。

黒く鋭い文様。トーテムにも、棘だらけの茨にも見えるそれが、前腕から二の腕へと這い上がり、毒蛇のように首元へ絡みつく。

腹と肩には古い傷痕がいくつも残...

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