第23章 絶好の機会

高原文也は、本当に眠ってしまっていた。

この精神病院じゅうをひっくり返すようなマフィアの若旦那は、さっきあの変態じみた脅し文句を投げつけたきり、広いダブルベッドにどさりと倒れ込み、目を閉じた。

余計な動きは一切ない。阿部奈々を見もしない。

毛布すら掛けず、ベッドのど真ん中を大の字で占領している。

阿部奈々は金属椅子に硬直したまま座り、呼吸さえ強くできなかった。

足首で赤いランプを点滅させる電子足枷。そこからベッドへ伸びる、3メートルの鎖。

動けない。動くのが怖い。

椅子は冷たく硬く、尾てい骨が割れそうだった。太ももは同じ姿勢で痺れきり、何万匹もの蟻が這い回っているみたいにじんじ...

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