第27章 取引

阿部奈々は高原文也に腕をつかまれたまま引きずられ、手首が千切れそうに痛んだ。

「遅れるな」

高原文也は振り返りもしない。

人混みを割り、食堂のいちばん奥――隅っこの金属テーブルへ一直線。

そのテーブルを中心に半径3メートル、まるで結界でも張られているみたいに誰も近寄らない。

灰色の服を着た狂人どもは、向こう側で肩を寄せ合って立ち食いしている。混んでもいい、ここにだけは来ない。来られない。

高原文也が手を放した。

続けて椅子を引き、どさりと座る。

彼は無造作に、山盛りのステンレス製トレーを向かいへ押しやった。

「座れ。食え」

阿部奈々は赤くなった手首を揉みながら、心の中で一...

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