第28章 約束を果たす

……正しい。いまの彼女は、自分ひとりすら守れない。

生き残るしかない。このイカれた連中の中で足場を作り、その上でモニカの消息を探る——それしか道はなかった。

阿部奈々はうつむき、もう正面ゲートのほうを見ない。高原文也の背中に遅れないよう、黙って食堂を出た。

頭上では食事終了のアナウンスが耳障りに反響し、数百人がいっせいに通路へなだれ込む。廊下は一瞬で身動きもできないほど詰まった。

汗の酸っぱい臭い。安い消毒液のツンとした臭気。それに、患者から立ち上る得体の知れない体臭が混ざり合う。灰色の服と、派手な色の観測員制服がぐちゃぐちゃに絡み、沸騰したスープのような濁流になっていた。

阿部奈...

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