第32章 変態の保護

阿部奈々は考えれば考えるほど、胸の奥がぎゅっと潰れるみたいに苦しかった。家では実の母親に殴られ、レストランでは店長に怒鳴られ、ようやく掴んだ仕事だって、今度はこの気分屋のマフィアのボスに皮肉を浴びせられる。

背中に向かって叫んでやりたかった。――私は刺激を求めてここに来た変態なんかじゃない。ただ飯を食うためなんだ、と。

でも、叫べない。下唇を噛み切るほど噛んで、涙を喉の奥へ押し込んだ。こいつの機嫌を損ねたら終わりだ。重罪人だらけの地獄みたいな場所で、生き延びるには……彼に縋るしかない。

「ゴウン――」

Fエリア5病室。背後で、分厚い扉がゆっくり閉じていき、鈍い施錠音が腹の底まで響いた...

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