第33章 最悪の選択ってわけじゃない、だろ?

阿部奈々は言葉を詰まらせた。目の前の現実が、どうしても飲み込めない。あまりにも馬鹿げている。

高原文也は手を引っ込めると、呆けた彼女の顔を眺め、口角をふっと持ち上げた。

それは――本物の笑みだった。

彼は背を向け、広いダブルベッドへ向かう。黒いタンクトップの襟元を無造作に外しながら。

「制御室の馬鹿どもが、お前をここへ放り込んだのは……最悪の選択ってわけでもない」

そう言い捨てると、高原文也は浴室へ入った。

すぐに、しゃああ……と水の音が立ち上がる。

阿部奈々はその場から動けない。頭の中で蜂が何百匹も羽音を立てて暴れているみたいだった。

さっき、なんて言った? 最悪じゃない―...

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