第34章 ボス?!

阿部奈々の頭の中が、ぶわっと音を立てて白くなった。

ビルが高原文也を何て呼んだ?

ボス……?

岩みたいにごつい男を呆然と見上げ、それから隣で相変わらず目を閉じている高原文也へ視線を移す。

高原文也は座り方ひとつ変えないまま、喉の奥で「……ん」と短く鳴らした。

それだけで、ビルはすっと長椅子の斜め後ろへ下がり、背筋を鉄棒みたいに伸ばして直立する。

その後ろのモニカは完全に固まり、阿部奈々へ狂ったみたいに目配せしてきた。口は卵でも入るくらい開いたまま。

――資料には「孤立的で、近づく者には発狂」って書いてあったじゃない。

なのに、なんでビルみたいな化け物が、あんなふうに従うの?

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