第35章 誰が手を出せるというのか

運動場には、灰色の服を着た男が数百人。なのに、誰ひとり声を上げなかった。

連中はじりじりと後ずさりして、長椅子の周りだけが不自然なほど広く空く。火の粉が飛んでくるのを、皆が本能で恐れている。

高原文也は長椅子に座り直すと、長い脚を投げ出した。態度はふてぶてしいほど堂々としている。

そこへ、人垣の後ろから下山凛が現れた。今日はあの威圧的なベストは着ていない。灰色のTシャツ一枚。――それでも、空気が変わる。

床に広がった血だまりなど一瞥もしないまま、凛は長椅子の背もたれにどっかと腰を落とした。脚をぶらぶら宙に揺らす。

「今日、やけに荒れてんな。女のために、こんな大勢の前でケジメつけると...

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