第39章 期限前に解き放たれた化物

この部屋は、汗と鉄錆の匂いが鼻の奥に張りついて、くらくらする。だが今この瞬間だけは、灰色の服を着たイカれた連中に視線を舐め回されることもない。気分ひとつで空気を凍らせる、あの陰気なマフィアが横にいるわけでもない。

阿部奈々は手慣れた指つきで、モニカの髪を三つに分ける。指を滑らせ、ゆっくり、きっちり。編み目の整った三つ編みが形になっていく。

「お金もらってロサンゼルス行ったらさ、いちばんセクシーなビキニ何着も買うの。ビーチで一日中寝転んでやる。誓うけど、もう一生、灰色とピンクは見たくない」

「うん、ロサンゼルス。あたし、あの500万手にしたら電話番号ぜんぶ変える。片道のチケット買って、二...

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