第43章 見飽きたか?

高原文也は、阿部奈々が突きつけた「誘い餌なのか、それとも守っているのか」という鋭い問いに、すぐには答えなかった。

警戒で張り詰めた彼女の目を見つめたまま、喉仏が一度、こくりと上下する。

言葉の代わりに彼は腰を折り、プラスチックの収納ケースから黒いズボンを一枚取り出した。

阿部奈々は唇を噛み、怪我をしていない左手でケースの底の靴下を探る。狭い箱の中で手が重なり、彼女の指先が、うっかり彼のごつごつした掌をかすめた。

薄いタコのある、熱を帯びた感触。

それだけで、感電したみたいに手を引っ込めてしまう。

しゃがみっぱなしだったのと、さっきまでの動揺が重なって、勢いよく手を引いた瞬間、体の...

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