第46章 透明人間

重厚な扉が、低い音を立ててゆっくりと横へ滑った。

阿部奈々は手にした古い本をきつく握りしめ、書架の影へと身を縮める。

息を殺し、わずかな隙間から外をうかがった。

入ってきたのは、痩せぎすで背の高い男だった。

灰色の服。首には太い黒蛇の刺青。目つきは冷たく、舌をちろりと出す毒蛇そのものだ。

食堂で見たことがある。ジェニック。危険人物中の危険人物。

その背後に、緑色のぴったりした制服を着た少女が続いていた。奈々より小さく見える。紙みたいに薄っぺらい身体。うつむいたまま両手を絡め、全身を震わせ、足取りはふらふらと頼りない。

阿部奈々はその少女を見て、奥歯を噛みしめた。

不意に、過去...

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