第50章 怪物の優しさ

阿部奈々は、暑いと感じていた。

うっとりするほど、心地いい熱。

思わずそのぬくもりへ身を寄せ、頬を弾力のある硬い筋肉にすりつける。

ふう、と満ち足りた息が漏れた。

左手まで伸ばして、まるでテディベアでも抱くみたいに、その温もりの腰へ腕を回す。

「あと30センチでも下を探ったら、後悔するぞ」

頭の上から、不意に低くしゃがれた声が落ちてきた。

阿部奈々はばっと目を開く。

視界が一瞬で冴えた。

目の前にあったのは、高原文也のあの刀傷の走った顔。息が触れそうなほど近い。

しかも自分の手は、彼の腰にしっかり回っている。

脚まで彼の太腿に乗っていた。

ひゅっと息を呑み、感電したみ...

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