第53章 ピンクのスイートハート

阿部奈々が手であおいでいると、モニカが突然顔を上げた。血の気が引いている。

「奈々!」モニカの声が裏返る。「服……!」

阿部奈々は反射で視線を落とし、凍りついた。

中に着ているのは薄い白い下着一枚だけ。鎖骨の下から胸元にかけて、大きく肌がさらけ出ていた。

朝、高原文也のせいで頭に血が上り、パーカーだけ引っかけて飛び出した。インナーを着ること自体、まるごと忘れていたのだ。

「くそ……!」

奈々は勢いよく両腕を交差させ、胸を抱えて縮こまる。

でも――遅い。

訓練室のあちこちから、視線がじわりと這ってくる。肩、鎖骨、腰へ。ぬめつくように張り付いて離れない。

ヒュウ、と口笛が鳴った...

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