第54章 服を一枚脱いだだけでどうした?

高原文也は、彼女をFエリア-5へ引きずり戻したりはしなかった。

彼は彼女のパーカーの前身頃を掴んだまま、ずるずると引きずって、Fエリアの廊下の突き当たりまで連れていく。

薄暗い。壁には窓ひとつない。

阿部奈々はここへ来て一週間になるが、こんな奥まで足を踏み入れたことは一度もなかった。

高原文也は片手で暗証番号ロックを素早く叩く。

扉が跳ねるように開いた。

中は、息が詰まるほど狭い部屋だった。灰色の壁、硬い床。マットもない。

あるのはシングルベッドと、細い机と、椅子が一脚。それだけ。

高原文也が奈々の背中を押した。

「っ……!」

よろめいた奈々は鉄のベッドフレームに膝をぶつ...

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