第55章 やってはいけないこと

高原文也は、まだ扉の外に立っていた。手はまだ、ドアノブをきつく握りしめたまま。

行かなかった。

廊下の冷たい照明が上から落ち、こめかみに浮いた青筋をくっきりと照らし出す。ぴく、ぴくと脈打っていた。

彼は視線を落とし、自分の右手を見つめた。

ついさっきまで、この手で阿部奈々の襟元をつかみ、訓練室からここまで引きずってきたのだ。

体の震えが、まだ止まらない。

怒りじゃない。

ぞっとするような後恐怖だ。

訓練室で、阿部奈々が上着を脱いだ瞬間。あの時、完全に頭の中で何かが弾けた。

男どものまとわりつく視線。

舐めるような下卑た目つき。

あちこちから飛ぶ口笛。

その全部が、神経...

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