第20章 見て見ぬふりの良さ

千崎謙人は小さく咳払いをして、しらを切ろうとした。 

「じいさん。俺、毎日仕事で手一杯なんだよ。何ができるっていうんだ。外の噂なんか鵜呑みにするなよ」

「噂だと?」

千崎達郎は箸を卓に叩きつけ、怒鳴りつける。 

「江藤乃唯を別荘に住まわせて、会社に好き勝手出入りさせてる。あれも噂だって言うのか!」

刃物みたいに鋭い視線が、まっすぐ千崎謙人に突き刺さった。 

「前から言ってるだろう。江藤乃唯はまともな人間じゃない。少しでも頭が残ってるなら距離を取れ。腹の底が見えない連中と、ずるずる関わるな」

謙人を叱り飛ばしたあと、達郎は今度は慈しむような眼差しで栗原舞歌へ向き直る。 

「舞歌...

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