第21章 必ず誘惑を成功させる

「降りろ!」

千崎謙人は振り返り、栗原舞歌をきっと睨みつけた。切迫した声に、有無を言わせぬ命令が混じる。

「急ぎの用ができた。お前はタクシーで帰れ」

ついさっきまで千崎達郎の前で口にした誓いも、「舞歌を大事にする」と言った言葉も、千崎謙人はあっさり宙へ放り投げた。

胸がどくどくと暴れている。江藤乃唯に、万が一のことがあったら――その恐怖だけが頭を埋め尽くしていた。

突然の怒鳴り声に、栗原舞歌は肩を跳ねさせた。だが彼の顔に浮かぶ焦りと動揺を見た瞬間、すべてを察する。

また江藤乃唯。いつだって、江藤乃唯。

舞歌は薄く笑い、冷たく返した。

「本気で言ってるの?」

「千崎謙人。ここ...

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