第26章 彼は離婚したくない

「夢でも見てるの?」

栗原舞歌は鼻で笑った。千崎謙人の言葉に、長年押し殺してきた怒りが一気に噴き上がり、瞳の奥で赤黒く燃える。

「たしかに私はあなたの妻。でも、家政婦じゃない」

「洗濯に料理、あなたの世話に、おじいさまの相手。聞こえは『奥さま』でも、この家の細々したこと全部、私が回してきた。家政婦以下よ」

「……もう十分。私、辞める。やりたい人がやればいい」

「それに――」

舞歌は言葉を切り、意味ありげに江藤乃唯へ視線を流した。そして、一音ずつ噛みしめるみたいに告げる。

「これからも私があなたの妻かどうか……まだ、分からないから」

「……何だと?」

千崎謙人は眉を吊り上げる...

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