第36章 艶めかしいキス

栗原舞歌は褒められて、少しばかり照れてしまった。頬に淡い朱が差し、反射的に視線を落とす。

「たまたま私の専門分野だっただけです。大したことじゃ……」

「十分だ。俺は満足してる」

流川瑛介はタブレットを閉じた。冷ややかな眉目が、わずかにほどける。

「ますます楽しみになった。栗原さんが、こちら側に来る日が」

礼代わりに、流川瑛介は栗原舞歌を食事に誘った。

断ろうとして、言葉が喉で止まる。家へ帰れば、また千崎謙人と江藤乃唯の顔を見せられる――そう思うだけで、胸の奥がざわついた。

少しだけ迷ってから、彼女は小さくうなずく。

「……ありがとうございます、流川さん」

彼のスーツの着こな...

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