第45章 もう隠そうともしない

その声を聞いた瞬間、千崎謙人の階段を下りる足が、ふっと止まった。

振り返った彼は眉間に皺を寄せ、鋭い視線を二人の間に何度も往復させる。露骨な不機嫌さが滲んでいた。

――千崎謙人が何かをするのに、誰かに教えられる筋合いがあるか?

たとえ流川瑛介だとしても、そんな権利はない。

まして、どんな立場で、何の資格があって、栗原舞歌に謝れと言う?

あの二人は――どういう関係なんだ。

喉元までせり上がった問いを、千崎謙人は噛み殺した。今は江藤乃唯の怪我が優先だ。考えている暇などない。歯を食いしばり、まずは病院へ連れていくしかなかった。

江藤乃唯の容体が落ち着いたら、そのとき改めて片をつければ...

ログインして続きを読む