第52章 彼女の過去

千崎謙人は車に乗り込むと、張って痛むこめかみを指で揉んだ。声には露骨な疲れがにじむ。

「昨夜言ってたな。……当時、栗原舞歌がいた児童養護施設の責任者と、通ってた学校の先生、それから同級生が見つかったって」

「はい」秘書が小さくうなずく。

千崎謙人は息を吐き、短く命じた。

「今どこにいる。会わせろ」

――三十分後。

人通りの少ない路地裏の喫茶店。

千崎謙人が扉を押し開けると、個室には年齢の違う女が三人、すでに席についていた。

秘書が慌てて前に出る。

「千崎社長。こちらが、奥様が当時いらした児童養護施設の責任者、間宮さんです」

「それからこちらが、奥様の小学校時代の担任だった...

ログインして続きを読む