第58章 祖父からの電話

昨夜のことは、酔っぱらっていた、という輪郭だけが曖昧に残っている。

その先――流川瑛介に壁へ追い込まれて、空気がじわりと艶を帯びていった……ような。

思い返すほど、栗原舞歌の顔色はさっと青ざめた。慌てて視線を落とし、自分の服を確かめる。

……よかった。寝間着は乱れていないし、身体にも違和感はない。

その事実に、ようやく胸の奥の息が抜けた。

と、そのとき。

ドアがすっと押し開けられる。

目を覚ましている彼女を見ても、流川瑛介は驚いた様子もなかった。

「起きたか」

落ち着いた声。昨夜の「あれ」を匂わせるような気配は、どこにもない。

「昨夜はひどく酔ってた。君の部屋の暗証番号が...

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