第1章

冷たい石の壁が頬に触れ、その感触で意識がはっと覚醒する。

また一日が始まる。地獄での、新たな一日が。

目を開けると、見慣れた闇がたちまち私を丸ごと飲み込んだ。この地下室にあるのは、蛍の光のように明滅する裸電球がひとつだけだ。

足首にはめられた鉄の枷が、動くたびにガチャリと音を立てる。もう何日になるだろう……ずっと私の相棒だった音だ。

身を起こそうともがきながら、壁に手を伸ばす。そこには無数の傷が刻まれていて、すべてが私自身の爪でつけたものだった。

一、二、三……

壁の印を数える指が震える。二千五百五十七。

七年。丸七年だ。

「くそ」

虚空に向かって囁いた。

「どうして私は、こんなにも長い年月を耐えてこられたのでしょう?」

七年前、私はまだ二十二歳で、愛があれば何でも乗り越えられると信じていた世間知らずの娘だった。そして今、私はこの暗い檻の中で、歩く屍と成り果てていた。

忘れたいと願えば願うほど、記憶が津波のように押し寄せてくる。

「怖がらなくていいよ、絵里。俺がずっと守ってあげるから」

そう和也は約束してくれた。

和也に初めて会ったのは、私が十歳の時だった。母が孤児院から十七歳の男の子を連れてきて、今日からこの子が絵里のお兄ちゃんよ、と言ったのだ。

吸い込まれそうな深い青い瞳、優しい微笑み、そして、私を安心させてくれる腕。

あの頃の私は、本気で自分が世界一幸運な女の子だと思っていた。愛情深い母、守ってくれる兄、そして我が家である葡萄谷で一番美しい葡萄園。

母が最初から何かを企んでいたなんて、知る由もなかった。

「いいこと、絵里」

母はよく囁いた。

「和也はいずれすべてを相続する運命にあるの。二人が結婚すれば、水原の血筋は安泰よ」

十五歳になった頃から、母はこの言葉を私の耳元で繰り返し囁くようになった。冗談だと思っていた。和也はお兄ちゃんなのに、どうして私たちが……

けれど私の心は、いつしか彼に対して禁断の想いを抱き始めていた。

彼が佑美さんと一緒にいるのを見ると胸が痛んだ。二人の婚約の話を聞いては、夜も眠れなかった。ただの少女の淡い恋心で、大人になれば消えてしまうものだと思っていたのに。

私は間違っていた。

「お母様が一番よく分かっているわ……あの子はあなたを愛する、愛さなければならないの……」

壁の向こうから、母の途切れ途切れの声が聞こえてくる。

隣の独房から、母の狂気に満ちた呟きが漏れてくる。七年間、母は私と同じ闇に閉じ込められ、その心は完全に壊れてしまっていた。

「お母さん……」

弱々しく呼びかけた。

「大丈夫?」

けれど母には届かない。ただ同じ言葉を何度も何度も繰り返すだけだ。

鉄の扉の錠に鍵が差し込まれ、回る音がして、私は身を強張らせた。誰が来たのかは分かっている。

盆を手に、和也が扉を押して入ってきた。相変わらず見目麗しいけれど、その瞳は七年前とは比べ物にならないほど冷え切っている。今の彼が私に向ける視線は、まるで敵を見るかのようだ。

「食事だ」

彼は感情のこもらない声で言い、盆を置いた。そこには、カビの生えたパンと濁った水だけ。

なんとか体を支え、もう少し真っ直ぐに座ろうと努力する。

「和也……」

「黙れ」

彼は冷たく遮った。

「お前の声は聞きたくない」

「ただ、言いたかったのは......」

「何を言うんだ?」

彼は勢いよく振り返った。その青い瞳は怒りに燃えている。

「お前とお前の母親は潔白だと? 無理やりやらされたとでも言うつもりか?」

口を開いたが、声は出なかった。

「七年だぞ、絵里。お前たちは、俺と佑美のすべてをめちゃくちゃにしたんだ!」

彼の声は怒りで震えていた。

「俺は彼女と結婚して、普通の人生を送って、幸せになれたはずなんだ!」

「分かってる……」

涙が頬を伝った。

「私たちが間違っていたことは、分かってる……」

「責任を取れだと? いいだろう、それがどういうことか、きっちり教えてやる。一生をかけた償いだ」

それが、無理やり挙げさせられた結婚式の後、彼が私にかけた最初の言葉だった。その瞬間、私の人生は終わったのだと悟った。

「あの夜のことを覚えているか?」

和也は突然しゃがみ込み、私の顔を覗き込んだ。

「お前の母親が俺に薬を盛り、お前を俺のベッドに送り込んだ。翌日には記者を呼びつけて写真を撮らせ、お前と結婚するように脅迫した」

私は目を閉じた。彼の怒りに満ちた表情を直視できなかった。

(名前や指輪だけじゃなく、あなたの心が欲しかった)

私は心の中で苦々しく思った。

けれど、それを口に出すことは決してできなかった。言えば彼をさらに怒らせるだけだと分かっていたからだ。

「これを食え。お前がここで餓死するのを見るのはごめんだ」

彼は立ち上がり、去ろうとした。

「和也!」

私は思わず大声で呼び止めた。

彼は立ち止まったが、振り返りはしなかった。

「佑美さんは……元気にしてる?」

長い沈黙。

「他の男と結婚した」

彼の声には、果てしない痛みが滲んでいた。

「お前たちのせいで、俺は生涯で唯一愛する女を失ったんだ」

鉄の扉がバタンと閉まり、私は暗闇の中に一人取り残された。

カビの生えたパンに手を伸ばしたが、一口かじった瞬間、焼けるような痛みが胃を突き刺した。

「あっ!」

私は激痛に体を二つに折り、全身が痙攣した。

この痛みはもう何ヶ月も続いている。自分が病気であることは分かっていた。重い病気だ。それでも誰にも言わなかったのは、和也に同情を引こうとしていると思われたくなかったからだ。

痛みはさらに増し、口から温かいものが流れ出るのを感じた。見下ろすと、白い囚人服の上に鮮血が飛び散り、布地の上で衝撃的な赤を放っていた。

胃がん。

医者の診断がなくとも、それが自分の病名だと分かった。七年間の拷問、劣悪な環境、そして精神的な絶望が、ついに私の体を蝕み尽くしたのだ。

「可愛い子……和也は絵里を愛してくれるわ……」

隣からまた、母の狂った呟きが聞こえてくる。

笑いたかったが、そうすると痛みがひどくなる。

私を愛する? 私が死ぬことを望んでいる。そして正直なところ、私も早く死にたいと願っていた。こんな風に生き続けるのは、あまりにも消耗が激しすぎる。

視界がぼやけ始めるにつれて、血はますます流れ出た。

これが、死ぬということなのか。想像していたほど怖くはない。

かろうじて頭を上げ、あの弱々しい光の方へ顔を向ける。朦朧とする意識の中、十歳の頃の陽光と、和也の優しい笑顔が再び見えた気がした。

「和也……」

最後の力を振り絞って、彼の名前を呼んだ。

「もしやり直せるなら、あなたたち二人を一緒にしてあげたかった……」

魂がこの壊れた体から離れていくのを感じながら、すべてが暗くなっていく。

(私がしてきた呼吸の一つ一つがあなたのためだったのに、あなたは真実を知ることなく墓場まで行くのね)

意識が遠のく中で、私は思った。

(だって、私の想いは始まる前から運命づけられていたのだから、痛みの他に何も生み出すことのできない、毒された種だったのだから)

完全に意識を失う前、私は最後の力を振り絞って祈った。

「もし魂に本当に二度目の機会が与えられるのなら」

私は祈った。

「どうか、彼の幸せを壊す者ではなく、助ける者として生まれ変わらせてください」

「次の人生では、二人を引き裂くのではなく、結びつける者になれますように」

闇がすべてを飲み込んだ。

今度こそ、私はようやく自由になれる。

人生の最後の瞬間、自分の心臓の鼓動が止まるのを聞いた。そして、すべてが静寂に包まれた。

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