第2章
はっと目が覚めた。
冷たい石壁の地下室ではない。ピンク色の天井。見慣れたバラ模様の壁紙、あのクリスタルのシャンデリア……
ここは私の部屋! 私が二十二歳だった頃の!
「そんな……ありえない……」
震える手で自分に触れる。滑らかで柔らかな肌、監禁されていた時の傷跡はない。和也が怒りに任せて私の首を絞めた痕が残っているはずの首筋に触れても、何もない。
重い体がのしかかってきて、嗅ぎ慣れた男の匂いに体が瞬時に凍りついた。
「和也?」
彼の目は虚ろで、頬は異常に紅潮している。明らかに薬を盛られている。その荒々しい手が私のネグリジェを引き裂こうとしながら、意味不明な言葉を呟いていた。
ああ、神様!私は追体験している。私たちの人生すべてを破壊した、あの夜を。
私はナイトスタンドのカレンダーに目をやった。二〇一七年三月十五日。
本当に生まれ変わったんだ! すべてを変えてしまった、あの夜に!
「やめて!」
ありったけの力で彼を突き放す。薬の影響下で、和也はほとんど抵抗できず、ベッドの端によろめいた。
私は急いで引き出しの中を探り、あの二日酔いの薬の瓶を見つけ出す。七年間の辛い記憶が、その場所を正確に覚えさせていた。あの頃の私は、ただの二日酔いの薬だと馬鹿みたいに信じていた。でも今は知っている。あれは母が特別に用意した解毒剤なのだと。
「和也、私を見て!」
私は彼の肩を掴み、無理やり目を合わせさせる。
「母さんに薬を盛られたのよ――しっかりして!」
「絵里?」
彼は瞬きし、必死に焦点を合わせようとしている。
「おれ……頭がくらくらする……体が、すごく熱い……」
「これを飲んで!」
私はためらわずにキャップをひねり、彼の口に流し込んだ。
「解毒剤よ!飲めば大丈夫だから!」
和也は本能的に抵抗しようとしたが、私は彼の頭をしっかりと押さえつけた。前世での七年間の後悔が、私をかつてないほど決意を固めさせていた。この悲劇を絶対に繰り返すわけにはいかない!
「私を信じて、和也。今回は私を信じて!」
十分後、彼の目に光が戻り始めた。自分たちが置かれている状況を理解した途端、彼の顔は死人のように真っ青になった。
私の服ははだけ、髪は乱れ、そして彼はシャツも着ずに私のベッドに座っている。
「くそっ!」
和也は飛び起き、罪悪感と怒りがその顔に入り混じっていた。
「俺は、もう少しで……すまない、絵里。自分が何をしていたのか、分からなかった!」
「和也のせいじゃないわ」
私は破れたネグリジェを整え、声を平静に保とうと努めた。
「母さんの仕業よ。ワインに何か入れたの」
「なんだって!?」
和也の表情が罪悪感から驚愕に変わった。
「母さんが……なぜ?」
私は深呼吸した。この再生は私に二度目のチャンスを与えてくれた。そして今回こそ、私は正しいことをする。
「母さんはあなたを水原家の後継者にすることに執着しているからよ」
私は彼の視線を受け止めながら言った。
「そして、そのための子供を産む器としてしか、私のことを見ていないの」
和也の顔が険しくなり、拳がギリッと音を立てて握りしめられた。
「あの狂った女め! よくも――」
「和也」
私は彼の言葉を遮った。胸が張り裂けそうで息もできないほどだったが、言わなければならなかった。
「あなたのいるべき場所は、佑美の隣よ」
ガラスの破片を飲み込むような思いで、一言一言を紡いだ。
「彼女の元へ帰れるように、私が手伝うわ」
部屋中が静まり返った。和也は、まるで私が完全に狂ったことでも言ったかのように、目を丸くして私を見つめている。
「絵里、分からない」和也は眉をひそめた。「一体どうしたんだ、急に?」
バンッ!
ドアが乱暴に蹴破られ、母が嵐のように部屋に飛び込んできた。私たちが座って話しているのを見て、その顔に浮かんでいた期待は瞬時に怒りへと変わった。
「絵里! 正気なの? どうして何もかも台無しにするのよ!」
母は私に向かって駆け寄り、平手打ちをしようと手を振り上げた。和也が即座に私の前に立ちはだかる。
「やめろ!」
和也の声が鋼のように部屋を切り裂いた。
「和也、あなたには分からないのよ!」
母の目は狂気に爛々と輝いていた。
「あなたたちは結ばれなければならないの! それこそが水原家の血筋を続ける唯一の方法なのよ!」
私は立ち上がり、生まれ変わってから初めて母と真っ直ぐに向き合った。前世での七年間の監禁生活が、母の心に潜む闇を私に見せつけてくれた。もう恐れたりはしない。
「義理の兄妹が結婚するなんて、世間がどう言うか分かってる?」私は冷静な声で言った。「あなたが必死で守ろうとしている家名を、あなた自身が破壊することになるのよ」
「スキャンダルですって?」
母はその言葉を吐き捨てた。
「お父様がこの葡萄園をゼロから築き上げたのよ! 和也のビジネスセンスがなければ、あそこは塵と化すわ。それがお父様の遺産に望むことなの?」
母は突然私の方を向き、その表情が邪悪なものに変わった。
「絵里、もし協力しないなら、あなたの経済的支援をすべて打ち切ることだってできるのよ! あなたを無一文にしてやるわ!」
「もういい! 母さん、どうして自分の娘にそんな……」
和也が怒りに満ちて彼女の言葉を遮った。
「この件で私に逆らうなら、もはや私の娘ではないわ!」
母の声は金切り声になった。
「和也、理性的になって、水原家の屋敷すべてがあなたのものになるのよ。あの葡萄園が今の市場でどれほどの価値があるか知っているの?」
母の歪んだ顔を見つめていると、果てしない悲しみが私に押し寄せてきた。
「お母さん、私はあなたが動かすための駒じゃない」
私は静かに、しかし鋼の意志を込めて言った。
「私の幸せは、あなたが取引の材料にしていいものじゃないの」
「あなた......」
母が何かを言いかけたが、和也はすでにドアに向かって歩き出していた。
「はっきりさせておこう」
彼の言葉一つ一つが、石のように重く響いた。
「もう一度こんなことをしてみろ。ただ立ち去るだけじゃ済まない。警察に突き出してやる」
母の顔は青ざめたが、その瞳に宿る毒はさらに濃くなった。
「後悔するわよ!」
彼女は私たちを指さし、その声は脅迫に満ちていた。
「私の助けがなければ、あなたたちなんて何者でもないんだから!」
そう言い残すと、母は嵐のように出ていき、背後でドアを激しく閉めた。
部屋は再び静寂に包まれた。和也が振り返って私を見つめる。その表情は複雑だった。
「さっき言ったこと、本気か? 佑美のこと」
彼の目は、嘘の痕跡を探すかのように私の瞳の奥を覗き込んだ。
私は頷き、涙がこぼれ落ちるのを必死でこらえた。
和也は私のことを深く見つめ、何か言いたげだったが、結局何も言わずに去っていった。
部屋に一人取り残された。
私は鏡の前に歩み寄り、自分の若い顔を見つめた。白い肌、輝く瞳、二十二歳の若さがいとおしく花開いている。
しかし、心は年老いていた。七年間の痛みと絶望が、誰よりも私に本当の愛の意味を教えてくれた。
誰かを愛するとは、その人の幸せを願うこと。たとえその幸せの中に、自分が含まれていなくても。
「もう自分勝手な選択はしない」
私は鏡の中の自分に囁いた。
「たとえ一歩一歩が割れたガラスの上を歩くようでも、彼をいるべき場所へと導いてみせる」
私は携帯電話を手に取り、佑美を見つけるための電話をかけ始めた。
「二度目のチャンスを与えられたのよ、絵里」
私は自分に言い聞かせた。
「彼を勝ち取るためじゃない――ようやく、正しい方法で彼を愛するために」









