第3章

「佑美、和也が会いたがってる」

私は携帯を握りしめ、声が震えないように努めた。

「あなたに話があるんだって」

電話の向こうから、佑美の弾んだ声が聞こえてくる。

「本当? まだ怒ってると思ってたのに……」

「今夜七時、葡萄谷展望台で」

私は無理やり言葉を続けた。

「あの白いドレス、着ていくの忘れないでね。彼、あれが一番好きだから」

「絵里、最高! 助けてくれるって信じてた!」

電話を切った後、私は車のシートに崩れ落ちた。

一言一言が、喉を切り裂くナイフのようだった。

夕暮れ時、私は早めに展望台に着いた。沈みゆく夕日が川面を金色に染め上げ、胸が張り裂けそうなほど美しい光景を作り出していた。

私は慎重にすべてを準備した。シャンパン、白い薔薇、そしてキャンドル。

完璧な恋の舞台を整えながら、私はそれを別の女のために残して立ち去らなければならないのだ。

きっかり七時、和也が時間通りに現れた。私が提案したネイビーのスーツを身にまとい、十九本の白い薔薇を抱えている。

私は百メートルほど離れた木陰に隠れ、激しく脈打つ心臓を押さえた。

「佑美……」

和也の声が夜風に乗って聞こえてくる。

「和也!」

佑美が彼に駆け寄る。白いドレスがまるでおとぎ話のお姫様のように揺れていた。

唇を噛みしめ、二人が抱き合うのを見つめる。

この瞬間を、佑美の場所にいるのが自分であることを、幾夜夢見て眠りについただろう?

「やり直したいんだ」

和也は佑美にそう言った。けれど、その目は……

何かが私の注意を引いた。和也の視線が、何かを探すように辺りをさまよっている。

「まだ私のこと、好きでいてくれたんだね!」

佑美は彼にきつく抱きついた。

しかし、和也の目は探し続けるのをやめず、ついに私が隠れている方角を向いた!

背筋に冷たいものが走った。彼が探しているのは私のはずがない。今、彼の目には佑美だけが映っているべきなのだ。

心臓が胸から張り裂けそうだった。私は無理やり背を向け、よろめきながらその場を離れた。

三日後、水原家の屋敷、リビングにて

「佑美はどんなデートが好きなんだ?」

ソファに座った和也が私に尋ねた。

私は深く息を吸い込む。

「ロマンチックなのが好きよ。フランスのレストランとか、キャンドルディナーとか......予約を忘れないでね」

「贈り物は?」

「白い薔薇を、ちょうど十九本。期待っていう花言葉があるの」

一つ提案するたびに、心臓をナイフでえぐられるようだった。

和也は不思議そうに私を見た。

「どうしてそんなに彼女のことをよく知ってるんだ?」

私は笑顔を装った。

「女の子の考えることは似てるのよ」

噓だ......

本当の理由は、もっと惨めなものだった。どうして私じゃなくて彼女を愛したのか、その理由を知りたくて、何年もかけて佑美の好みを研究したのだ。

「今夜はレストランに連れて行ってあげて。窓際の席はもう予約してあるから」

私は続けた。

「彼女の椅子を引いてあげるのを忘れないで。ドレスを褒めて、それから……」

「絵里」

和也が突然、私の言葉を遮った。

「何?」

彼は長い間私をじっと見つめて言った。

「どうして、そこまでしてくれるんだ?」

彼の視線を避けながら、胸が締め付けられた。

「だって……二人に幸せになってほしいから」

あなたの涙を間近で見るより、遠くからあなたの笑顔を見ている方が、まだ痛みが少ないから。

翌日の午後、屋敷の庭で

「絵里!」

佑美が興奮した様子で駆け寄ってきた。

「昨日のデート、完璧だったの!」

彼女は私の両手を強く握った。

「本当にいいお姉ちゃんよ! 絵里がいなかったら、私たち絶対にヨリを戻せなかったわ!」

私は痛みを堪えて微笑んだ。

「二人が幸せなら、それでいいの」

「でも……」

佑美は考え込むように唇を噛んだ。

「和也、最近ちょっと変なの」

心臓が跳ねた。

「変って、どういうふうに?」

「デート中もどこか上の空だし、時々あなたのことを聞いてくるの」

佑美は戸惑ったように言った。

「絵里がどうしてるかとか、誰か付き合ってる人はいないのか、とか……」

胸の中で心臓が不規則に脈打った。

「それに昨日のディナーでも、誰かを待ってるみたいに入り口の方をずっと見てたの」

佑美は眉をひそめた。

「まさか、他に好きな子ができたとか、ないわよね?」

その瞬間、私の世界は完全にひっくり返った。

まさか、和也が私のことを考えている? いや、そんなはずはない。

「絵里? 大丈夫? 顔色が悪いわよ」

佑美が心配そうに私を見つめる。

私は無理やり息を吸った。

「何でもないの。ちょっと寝不足なだけ」

だが、落ち着いた様子の裏で、鼓動が耳元で雷のように鳴り響いていた。

「考えすぎだといいんだけど」

佑美はため息をついた。

「絵里、もし和也が本当に他の誰かを好きになってたら、私どうしたらいいと思う?」

彼女の澄んだ瞳を見つめていると、以前の痛みや嫉妬が、突如として複雑な感情に変わっていった。

「それなら……彼が心から何を望んでいるかによるんじゃないかな」

私はそっと言った。

「恋は、無理強いできないものでしょう?」

佑美は頷いたが、その目に一瞬、警戒の色がよぎった。

その眼差し、彼女は、私が必死で切り離しておきたい点と点を、繋ぎ合わせようとしていた。

その夜、寝室のベッドに横たわりながら、佑美の言葉が頭の中で響いていた。

佑美の言葉を何度も何度も反芻する。和也は上の空だった。私のことを尋ねてはくるものの、まるで誰か他の人が来るのを待つかのように、視線はドアに向けられている。

これらのディテールが、心の中でパズルのピースのように組み合わさり、私が信じるのをためらう一つの可能性を形作っていく。

私の再臨は、あの夜だけを変えたのではなかったのだろうか? それはどういうわけか、和也をも変えてしまったのだろうか?

七年前のあの夜、私は悲劇が起こるのを防いだ。率先して彼が佑美とヨリを戻す手助けをした。私の態度、私の変化……。

私が一歩引いたことで、ついに彼の視界に入ることができた、なんてことがあり得るのだろうか?

私は顔を覆った。感情が完全に混乱していた。

一方では、心の奥底の声が祝っていた。彼が本当に私を見てくれるかもしれない、本当に私を......その可能性が、危険な希望を胸の中に渦巻かせた。

もう一方では、理性が私に言い聞かせた。あなたは選択をしたのだ。キューピッド役を演じるということは、ゲームの途中で心変わりすることは許されない。

けたたましい電話の着信音が、私の思考を断ち切った。

和也だ。

私は長い間ためらった末に、電話に出た。

「もしもし?」

「絵里、明日、佑美の誕生日なんだ。何を贈ったらいいと思う?」

また佑美に関する質問。二人の関係が進展していることを喜ぶべきなのに、なぜこの言いようのない失望を感じるのだろう?

「彼女が……ずっと欲しがってたダイヤモンドのネックレスをあげたら、ティファニーのサイトにあるわ。リンクを送っておく」

「わかった」

和也は一呼吸おいた。

「絵里?」

「うん?」

「……最近、元気にしてるか?」

その質問に、私は不意を突かれた。

彼の口調には、今まで聞いたことのない何かが含まれていた――あれは、純粋な心配なのだろうか?

「元気よ。どうしてそんなこと聞くの?」

「いや、何となく……君、変わったみたいだから」

変わった? もちろん変わったわ。再臨がすべてを教えてくれて、手放す決心をさせたのだから。でも、そんなこと彼に言えるはずもない。

「多分、大人になっただけよ」

私はそっと言った。

「人って変わるものでしょう」

「そうだな」

彼はまた少し黙り込んだ。

「じゃあ、ゆっくり休めよ」

「うん、おやすみ」

電話を切った後、私は天井を見つめ、心は混沌としていた。

和也、あなたは何のゲームをしているの? そして、なぜ今なの? 私がようやくあなたを手放す強さを見つけたというのに。

どの道を進んでも、さらなる心痛へと続いているように思えた――彼のか、私のか。

この夜の静寂の中で、私はふと気づいた。私の再臨は、あの悲劇の夜を変えただけではないのかもしれない。それは、私たちの間のすべてを、静かに変えつつあるのかもしれない。

正直になるべき時は、既に過ぎ去ってしまった。この芝居の幕を開けたのは私なのだから、今やその苦い結末まで見届けなければならない。

取り消すことのできない犠牲というものがある。希望が心の中でちらつき始めても、その炎が私たち全員を焼き尽くす前に、私が消し去らなければならないとわかっていた。

前のチャプター
次のチャプター