第9章
絵里視点
ゆっくりと目を開けると、ブラインドの隙間から病室に陽の光が差し込んでいた。
こめかみを大きなハンマーで殴られているかのように、頭がズキズキと痛む。身を起こそうとして、左足に分厚いギプスが巻かれていることに気づいた。
「絵里! やっと目が覚めたんだね!」
聞き覚えのある声に顔を向けると、ベッドの傍らの椅子に直樹が座っていた。彼の目には涙が浮かび、その顔には疲労と心配の色が深く刻まれている。
「直樹?」 紙やすりのように掠れた声が出た。「ここ……どこ?」
「病院だよ」 彼はすぐに私の手を取った。「丸三日も意識がなかったんだ。医者の話だと、脳震盪と軽度の外傷性脳損傷だっ...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


縮小

拡大