第4章

「運転下手くそか!」

正典は不機嫌そうにクラクションを激しく鳴らし、前の車に向かって怒鳴った。顔は真っ赤に染まっている。

私は助手席に座り、黙ってスマホの保険情報に目を通していた。

「正典、自動車保険が来月で切れるわよ。更新忘れないでね」

彼は返事をせず、ただ渋滞する道で苛立たしげにハンドルを叩き続けている。

これが、私たちの結婚生活のパターンだ。

私が水道光熱費の支払いから彼の健康診断の日付まで、あらゆる事項を記憶する担当。彼が家計を支え、時折癇癪を起す担当。彼の足元に目を落とすと、案の定、片方は黒の靴下、もう片方はグレーの靴下だった。

この男は、靴下を履くときで...

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