第10章

コンテスト当日の夜、和泉陸と山田優介は二人ともやって来た。

ただし、和泉陸が行ったのは音楽会の方で、菊池明日香に教えられてようやくファッションデザインコンテストの会場に辿り着いたのだった。

ステージに上がる直前になって、和泉陸はようやく慌てて駆けつけた。

山田優介は向日葵の花束を、そして和泉陸は鮮やかな赤い薔薇を抱えている。

二人の視線が空中で交差し、まるで無言の戦場のようだった。

「優香、頑張って」

山田が先に一歩進み出て、向日葵を私の前に差し出した。

私は花束を受け取り、花の香りをそっと嗅ぐ。目には感謝の気持ちが満ちていた。

「ありがとう。あなたの助けがなか...

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