第5章

階段を下りると、家の前に山田優介の車が停まっているのが見えて、私は驚いた。

今日の彼は、いつものビジネス会議で着ているような堅苦しいスーツではなく、オフホワイトのスウェット姿だった。すらりとした長い脚は、まるで雑誌の表紙から抜け出してきたモデルのようだ。

「どうして急に?」

近寄りながら尋ねると、声に驚きが滲むのを抑えきれなかった。

母が和泉陸を断るための口実に過ぎないと思っていたのだ。

山田は微笑みながら、上品な紙袋を差し出してきた。中には私の大好きな季節限定の和菓子が入っている。

「母さんに言われて来たんだ。約束があるから遅れるな、ってね」

彼の口調には、どこか...

ログインして続きを読む