第6章

「ごめんなさい、ちょっと驚いちゃって」

夜の闇の中、菊池明日香の瞳が好奇の光できらめき、口元が微かに綻んだ。

「あなたたち二人、ふふっ、進展が早すぎじゃないかしら」

彼女の声は軽やかで、視線が私と山田優介の間を行き来する。

私は気まずさから山田の腕の中から抜け出す。頬が熱い。

和泉陸は明日香の隣に立ち、水面のように静まり返った陰鬱な表情をしていた。

「家の前でいちゃついて、まだ抱き足りないのか?」

和泉陸の声は冬の氷のように冷たく、人を凍え死なさせそうだ。

山田優介は意に介さない様子で肩をすくめ、和泉陸を真っ直ぐに見据えた。

「ああ、足りないな」

その眼差し...

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