第110章 白石菜々子はもう負けている

「叫べばいい」

松原真哉は顔を険しくし、眼差しの色がいっそう濃く沈んだ。

「お前に会いに来る前に、周りの人間は全員追い払っておいた。喉が潰れるまで叫んでも、助けなんか来ない」

「それは、どうだろうね」

言い終えるより早く、小泉星菜が声を上げる前に――くすり、と笑う声が、星菜の背後から落ちてきた。

小泉星菜ははっと振り返り、瞳が一気に輝く。

「今村真崎?」

そう。いま言葉を発したのは今村真崎だった。

彼は、小泉星菜と松原真哉から四、五歩ほどの距離に立っている。星菜に気づかせると、軽く微笑み、彼女の隣まで来て松原真哉の肩に手を置いた。

「松原社長。紳士的にいきましょう。星菜さん...

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