第122章 彼は少し嬉しい

「聖矢がいなくなった?」

松原真哉は目を細め、報告してきた使用人を見据えた。その視線には、抑えきれない殺気が滲む。

「若様の世話を任されておいて、どうして人ひとり見失う。……どんな付き方をしていた」

違う。私のせいじゃない。

彼女は庭の手入れをするだけの下っ端だ。松原聖矢の身の回りを任される立場など、あるはずがない。

使用人は血の気を失い、恐怖で喉が鳴った。けれど、白石菜々子が真哉にとって特別な存在だと分かっている。今ここで、菜々子の嘘を暴く勇気はない。

「申し訳ございません、松原さん」

逡巡の末、使用人は観念したように目を閉じた。

「私の落ち度です。若様をきちんとお守りでき...

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