第16章 彼は母親を見失った

そうだ。俺には、まだママがいる。

ママは俺のことがいちばん大事で、何があっても捨てたりしない。絶対に。

そう思った途端、松原聖矢はすっと息を整え、冷静さを取り戻した。

目が小さく揺れる。

階段を下り、小泉星菜のところまで行くと、腕を組んだまま、わざとつま先で彼女の腕をコツンと蹴った。

「もういいって、ママ。パパは行っちゃったんだから、可哀想ぶるのやめて。ほら、早く起きて。クレーンゲーム付き合ってよ」

「僕がやりたいの、全部いっしょにやってくれたら……菜々子さんに謝れなんて言わない。どう?」

――可哀想ぶる?

全身が痛くて、指一本動かせないほどなのに。

それを「芝居」だと言う...

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