第15章 またしても腹に算段を抱えた女

「もう一度だけチャンスをあげる。……『ママ』って呼びなさい」

伊代雲光は、相変わらず黙ったまま。

この無言の抵抗は、どんな激しい言い返しよりも新谷木雪を苛立たせた。

「……いいわ。いいわよ」ふっと笑う。その笑みは背筋が粟立つほど冷たい。「言うことを聞かないなら、聞かせる方法なんていくらでもあるの。闇市にね、薬があるって聞いたわ。飲ませたら――誰をママって呼べって言われたら呼ぶ。何をしろって言われたらする。そういう薬が」

彼女は身を屈め、伊代雲光の耳元へ息を落とす。

「少しだけ飲ませてあげたら、あなた、もっと可愛くなると思わない?」

伊代雲光の身体が、ぴんと一本の線みたいに強張った...

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