第21章 私は庄司景悠の婚約者

庄司景悠には、もう駆け引きの余地などなかった。

息子を落ち着かせる必要がある。自分の不眠も、どうにかしなければならない。

「……いい」

合意成立。

庄司景悠は、例の公事公办の口調に戻った。

「君の仕事については、坂東静に話して、市中心病院で一番いいポストを用意させる。通勤も便利だし、君も――」

「結構です」伊代妃奈が淡々と遮る。「あの病院、立花家が筆頭株主ですから」

庄司景悠のコーヒーカップを持つ手が、宙でぴたりと止まった。

立花家――?

契約結婚の話がまとまった直後に、平然と、自分の「いま」の相手である立花郎生の家を口にする。

……いい度胸だ。

もっとも、立花家は医学...

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