第25章 彼女の初めて

伊代妃奈は、残った力を振り絞って扉を閉めた。

あの大きなベッドに刻まれた屈辱。男の荒い息づかい。肌と肌が触れ合ったときの、焼けつくような熱――。

一コマ一コマ、一場面一場面が脳裏で何度も再生され、押し流されるたびに、心が崩れていく。

――あれは、彼女の初めてだった。

こんなにも馬鹿げた形で、奪われるなんて。

ポケットのスマホが、場違いなほどぶるぶると震えた。

苛立ちながら取り出すと、病院長からのメッセージが立て続けに届いている。

【伊代先生、大変です! 新谷木雪のファンが病院の正門を塞いでます!】

【横断幕を掲げて「病院から出て行け」って叫んでます。それに、先生に……土下座し...

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