第39章 彼女の一言で彼を怒らせられる

伊代妃奈は、問いかけられてぽかんとした。

――ほかに、何があるというの。

庄司景悠はそれ以上何も言わず、踵を返して出ていった。

扉が閉まった直後、別の影がするりと滑り込んでくる。

林田白弥がドアに背を預け、口笛でも吹くみたいに舌を鳴らした。

「伊代先生、やるねえ。一言であそこまで怒らせるなんて」

伊代妃奈は答えなかった。胸の内が、ぐちゃぐちゃだった。

「さっきの顔だけ見て判断すんなよ」林田白弥は椅子を引いて座る。「あんたが昏睡してた晩、あいつ、朝まで付きっきりだった。目、いっこも閉じてねえ。医者が『嚥下反射がない』って言ったらさ、薬――口移しで飲ませたんだぞ。あれは……すげえ絵...

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