第44章 彼女を説得する

伊代妃奈は必死にもがいた。

「放して! あたしに手ぇ出してみなさいよ!」

「だったら、してやる」

母親に追い詰められ、目の前の女には拒まれる。

庄司景悠の理性は、そのたびにぷつり、ぷつりと音を立てて切れていった。

衣擦れのかすかな音。

女が押し殺す息と、男の荒い呼吸。

がらんとした部屋の中で、それらがぐしゃぐしゃに絡み合う。

――その時だった。

「コンコンコン」

遠慮がちなノックが、場違いなくらい唐突に響いた。

続いて、庄司沢弥の怯えた声が扉越しに届く。

「パパ? ママ? 中にいるの? すごく大きな音がしたけど……」

庄司景悠の動きが、ぴたりと止まった。

伊代妃奈...

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