第46章 新谷木雪は庄司沢弥の母親ではない

庄司沢弥の胸が、どくんと跳ねた。反射的に大きな木の陰へ身を滑り込ませる。

見えたのは、長島由紀が車を降りる姿だった。あたりを見回し、校門の前で待っていた伊代雲光を見つける。やわらかくその手を取って、何か優しく声をかけ、それからそのまま黒いベントレーへと乗せていった。

弟が――連れて行かれた。

飛び出したかった。叫びたかった。けれど理性が、ぎりぎりのところで彼を引き留める。

だめだ。

ここで姿を見せるわけにはいかない。

新谷家はきっと、弟を自分だと思って連れて行ったのだ。ここで正体を晒せば、またパパに疑念を抱かせることになる。なら今この瞬間から、自分は弟――伊代雲光でいなければなら...

ログインして続きを読む