第86章 家族に会わせる

「もちろん、お見舞いに決まってるでしょう」

林田白弥は食盒をテーブルに置き、蓋を開けた。ふわり、とろり。濃い鶏スープの香りが一気に部屋へ満ちる。

「台所に頼んで、奥様のために煮込ませました。少しでも召し上がって?」

庄司大奥さんは視線すら寄こさない。

「飲まないわ」

「そんなこと言わずに」林田白弥はどかっと隣へ腰を下ろし、半分あやすように半分たしなめるように言った。「まさか断食で抗議ですか? それじゃ外の連中が得するだけですよ」

含みのある言い方に、庄司大奥さんのまぶたがぴくりと動く。

「腹が立って仕方ないのよ! 五年も育てた孫が、今じゃ家のことすら認めない!」言い出した途端、...

ログインして続きを読む